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発達障害② 「発達障害とそうでない人」

自閉症者は人口のどれくらいいるのか?という研究があります。
様々な機関の研究者がその統計をとるのですが、それによれば国によって、自閉症と診断される人の数が随分違います。2006年のある調査ではヨーロッパや日本では、米国に比べ多いことが報告されています。2011年の韓国の研究によれば近年その数が増えているともいいます。果たして自閉症は人種によって発生率が違い、現代社会において増えてきているものなのでしょうか?

答えは今のところ「いいえ」です。では、なぜこのような結果になるのでしょうか。自閉症者の統計を取る場合、多くの施設で自閉症の症状にあてはまる人への問診(聞き取り調査)を行うのですが、実はこの時診断に用いる基準(カットオフ値と呼ばれています)が細かく統一されていないためリサーチする研究者によって統計にばらつきが起きてしまうのです。
そもそも自閉症は社会生活が困難な人からそれと分からない程度の人まで症状の幅が広く、それがまるで虹の七色の濃淡のように見られることから「自閉症スペクトラム」と表現されています。
つまり軽度の自閉症者とそうでない人の違いを見分けることは元々難しいし、厳密に分けることにあまり意味はないのかもしれません。自閉症の特徴として挙げられる「相手の気持ちを想像することの困難さ」は、軽度なら自閉症でなくとも多くの人に当てはまるもので、経験から謙虚に学ぶという意味で努力する方向は同じだからです。

映画③「不安と恐怖、トラウマ必至のホラー映画」

不安と恐怖
似ているようでこの両者は大きく違います。医学的には不安は「対象のない恐怖」と云われ、本人にも何が怖いのか分かっていません。するとどうやって身を守ったらいいのか、何に注意して何から逃げればいいのか分からずひどく苦しいものです。

皆さんはホラー映画を見た時、前半は怖いのに後半なんだか怖くなくなってしまう経験はないでしょうか。主人公を怖がらせていたお化けかモンスターの正体が分かり興冷めしてしまうアレです。恐怖の正体が分からない前半部では、画面にいつ何が出てくるか分からないので、正体不明の怖れに常に緊張が解けません。不安とはこのような状態を指します。見る人を怖がらせようとするホラー映画の手法は、前半部ではお化けの正体を見せずに観客の不安を掻き立てようとするからです。

これに対し恐怖とは、対象の分かっている怖れです。恐怖症という病気がありますが、必ず「〇〇恐怖症」との病名がつきます。恐怖症は本人に何が怖いか分かっているので、対処も不可能ではありません。生物には「慣れる」という現象があるため、安全な状況で繰り返し恐怖を経験することで恐怖症を克服することができます。

つまり不安に苦しんでいる人は、まず何が自分を脅かしているかの正体を発見することが、心の平安を取り戻す第一歩になるのです。

ところで私が悪夢を見るほど観たことを後悔した史上最恐の恐怖映画「女優霊(1996年 監督;中田秀夫)」だけは慣れないので絶対にオススメしません。

フェスタ開催しました

去る11月10日、開業以来毎年行っているイベント「フェスタ・ドゥ・アンジェ」が開催されました。今年も通院されておられる方やご家族、医療機関関係の方々がおいでになりました。フェスタは、通院されておられる方の講演やショートケアで作っている作品の展示を中心としたイベントで今年で9回目になります。


私は診察室で患者さんのお話しを聞く立場なのですが、ある時「この話を私だけでなく、他の患者さんたちにも聞いてもらえばもっと多くの人が元気になるのに」と思ったことがありました。その方にすれば当たり前の努力であっても、大変に尊敬すべき生き方の人がいることを同じような苦しみの最中にいる人にも知ってもらいたいと思い、このイベントを開催するようになりました。 


今年はMASAさんのお話しに加え、アイリッシュ音楽のミュージシャンTommyさんとその仲間のストリートミュージックなどもあり賑やかなひと時でした。

来年はどんなお話しが聞けるのか楽しみです。皆さんお疲れ様でした。

映画② 「ゾンビ映画に別れの悲しみはない」

「ゾンビ映画に別れの悲しみはない」

大切な存在を失う苦しみは耐え難いものです。「失ってしまったものは仕方ない」と喪失を受け入れられればよいのですが人の心はそう簡単には割り切れないものです。うつ病は、失ったものへの執着が強すぎるがゆえにいつまでも自分を責めてしまう心理があります。私たち日本人の感情はこれが自然なのですが、外国はちょっと違うようです。

2018年、日本の映画界最大のヒット作といえば「カメラを止めるな」でしょう。我が国ではゾンビを扱った映画はヒットしない傾向にあるなか、純国産ゾンビ映画としては予想だにしない高収益をあげた作品といえます。爆発的な面白さの理由は、絶対に映画でしかできない緻密に計算されたカメラワークと、そして家族の結びつきを描いているからでしょうか。通称‟ゾンビ映画“と呼ばれるこのジャンルは日本より海外でたくさんの作品が作られ続けています。見た目には決して美しいとは言えないこのようなジャンルがなぜ海外では人々に受け入れられているのでしょうか。

私が思うにそれは宗教観の違いから起きる心の動きの違いです。日本人にとって愛する相手を失うことは『悲しみ』にほかならないのですが、海外ではそれが『恐怖』と感じられるようです。ゾンビ映画は、ついさっきまで身近だった人がゾンビに喰われると一瞬で怪物になって襲ってくるのが定番で、その恐怖の根底にあるのは愛するものを失う怖さです。その恐怖への共感が観客を引きつけるのですが、悲しみを感じることが自然な日本人にはどうもしっくりきません。亡くなった人に対する畏敬の気持ちが感じられないからです。むろん外国人も死者は敬うし悲しみも感じるのでしょうが、その前にある恐怖心はおそらく民族的な感情なのでしょうね。

映画① 「パニック症の人は見てはいけない!」

「パニック症の人は見てはいけない!」

パニック障害という病気は脳内のノルアドレナリン過剰分泌によって起きる激しい動悸や息苦しさが、起きた状況に誤認されるという性質があります。もし満員電車に乗っている時にこの発作に初めて襲われるとこれ以降電車に乗るのが怖くなるのも、起きた状況を脳が学習してしまうという、ヒトの高度な脳のメカニズムによって起きるとされています。すると治療法は、最初の状況を経験しても発作が起きないことを再学習すればよいわけですから、薬で発作を抑えつつ行動訓練するという行動療法が有効だと考えられています。

ところでパニック症状を持つ人にはオススメしない映画があります。「サンクタム」という映画がそれです。洞窟探検チームが世界最大の洞窟に挑みますが、台風の直撃で洞窟の水かさが増し閉じ込められた一行が未知のルートを探し決死の脱出に挑むというストーリーです。刻々と迫ってくる水や減っていく酸素、閉じ込められた絶望感があまりにリアルすぎて息苦しくなります。「ターミネーター」や「アバター」のジェームズ・キャメロン監督が制作に関わっているため映像のこだわりようが半端ない。あまりによくできすぎて“見てはいけない”一本でしょう。同様の映画に「ザ・コア」もオススメ(しません)です。

パニック障害は「ここから出られない」という錯覚から起きる心理的な閉所恐怖症です。よくできた映画だからこそ、まさに閉塞感を疑似体験するのでしょうね。見終わった後は外の空気を吸って「あぁ、出られて良かった」と安心したいものです。

診断① 診断とスクリーニング

「診断とスクリーニング」

ネットで公開されている様々なサイトを見て「私は〇〇病だと思います」と受診される患者さんは年々増えています。たしかにネット情報は手軽でスゴイ。超難解な専門書でも誰かが見事なまで解説していますし、医学書など手元になくとも相当な知識が手に入ります。
ただ精神医学に関しては少し問題があるように思います。


精神科の病気の症状は全て患者さんの頭のなか(意識の内面)にあり、血液やレントゲンなどの客観的な検査がありません。診断は患者さんに症状を詳しく尋ねる問診で行うことになるのですが、そこには①「医学的な深い知識」と②「医師としての経験」が重要になります。

患者さんとの対話のなかで病状なのか、人間としてあたりまえの心の動きなのかの区別をしていく作業が問診なのです。カウンセリングもこの問診という対話から始まります。
ネット情報は①にあたり、病気かそうでないかを大雑把にふるい分ける(これをスクリーニングと言います)に過ぎず、②で初めて正しい診断ができるのはそのような理由があるからです。

発達障害① 大人の発達障害の診断

「大人の発達障害の診断」

‟元々痩せている、日焼けしにくい、走るのは苦手だが泳ぎは得意”など、人は誰でも生まれつき違いがあります。発達障害は生まれつきの性質であって、ある年齢から始まる病気ではありません。
最近よく「大人(成人)の発達障害」という言葉をメディアで見かけるようになりました。

しかしそれらで紹介されている様子の多くは『今、現在』の問題点を挙げたものばかりで、その人に本当に発達の障害があるのか、まだその仕事に慣れていないだけなのか、それとも苦手なだけなのかの区別がつかないように思います。


発達障害の診断で重要なのは
・現在起きている生活上の苦労が、幼稚園や小学校の頃から続いてきたこと
・性格や育った環境による人格特性と区別すること
これらを、古い記憶をたどって診察で確認することです。
専門的な情報が広く世に知られることは賛成ですが、いたずらに見た人の不安をあおり、安易に発達障害と思わせるかのような情報は考えものですね。