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月別 アーカイブ: 2018年10月

映画② 「ゾンビ映画に別れの悲しみはない」

「ゾンビ映画に別れの悲しみはない」

大切な存在を失う苦しみは耐え難いものです。「失ってしまったものは仕方ない」と喪失を受け入れられればよいのですが人の心はそう簡単には割り切れないものです。うつ病は、失ったものへの執着が強すぎるがゆえにいつまでも自分を責めてしまう心理があります。私たち日本人の感情はこれが自然なのですが、外国はちょっと違うようです。

2018年、日本の映画界最大のヒット作といえば「カメラを止めるな」でしょう。我が国ではゾンビを扱った映画はヒットしない傾向にあるなか、純国産ゾンビ映画としては予想だにしない高収益をあげた作品といえます。爆発的な面白さの理由は、絶対に映画でしかできない緻密に計算されたカメラワークと、そして家族の結びつきを描いているからでしょうか。通称‟ゾンビ映画“と呼ばれるこのジャンルは日本より海外でたくさんの作品が作られ続けています。見た目には決して美しいとは言えないこのようなジャンルがなぜ海外では人々に受け入れられているのでしょうか。

私が思うにそれは宗教観の違いから起きる心の動きの違いです。日本人にとって愛する相手を失うことは『悲しみ』にほかならないのですが、海外ではそれが『恐怖』と感じられるようです。ゾンビ映画は、ついさっきまで身近だった人がゾンビに喰われると一瞬で怪物になって襲ってくるのが定番で、その恐怖の根底にあるのは愛するものを失う怖さです。その恐怖への共感が観客を引きつけるのですが、悲しみを感じることが自然な日本人にはどうもしっくりきません。亡くなった人に対する畏敬の気持ちが感じられないからです。むろん外国人も死者は敬うし悲しみも感じるのでしょうが、その前にある恐怖心はおそらく民族的な感情なのでしょうね。

映画① 「パニック症の人は見てはいけない!」

「パニック症の人は見てはいけない!」

パニック障害という病気は脳内のノルアドレナリン過剰分泌によって起きる激しい動悸や息苦しさが、起きた状況に誤認されるという性質があります。もし満員電車に乗っている時にこの発作に初めて襲われるとこれ以降電車に乗るのが怖くなるのも、起きた状況を脳が学習してしまうという、ヒトの高度な脳のメカニズムによって起きるとされています。すると治療法は、最初の状況を経験しても発作が起きないことを再学習すればよいわけですから、薬で発作を抑えつつ行動訓練するという行動療法が有効だと考えられています。

ところでパニック症状を持つ人にはオススメしない映画があります。「サンクタム」という映画がそれです。洞窟探検チームが世界最大の洞窟に挑みますが、台風の直撃で洞窟の水かさが増し閉じ込められた一行が未知のルートを探し決死の脱出に挑むというストーリーです。刻々と迫ってくる水や減っていく酸素、閉じ込められた絶望感があまりにリアルすぎて息苦しくなります。「ターミネーター」や「アバター」のジェームズ・キャメロン監督が制作に関わっているため映像のこだわりようが半端ない。あまりによくできすぎて“見てはいけない”一本でしょう。同様の映画に「ザ・コア」もオススメ(しません)です。

パニック障害は「ここから出られない」という錯覚から起きる心理的な閉所恐怖症です。よくできた映画だからこそ、まさに閉塞感を疑似体験するのでしょうね。見終わった後は外の空気を吸って「あぁ、出られて良かった」と安心したいものです。